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アジアビジネス入門59「SLAM DUNK旋風と香港・アジア」@日本型グローバルを考える(1)

カテゴリ:アジア

経済に活路 華人社会の逞しさ

香港の香港島北部、銅鑼湾(Causway Bay)にある複合施設「タイムズスクウェア」(Times Square、時代廣場)に日本のアニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK」の巨大なポスターパネルが掲げられている。タイムズスクウェア5階のポップアップストアの案内である。香港はコロナ規制の緩和で街には人出が戻り、2019 年に起きた民主化を求めるデモの残影はすでにない。政治ばかりでなく、経済に目を転じれば、香港株式市場では中国株が大きく上昇する現実もある。表面上は政治より経済に活路を求める華人社会の逞しさが目に映る。

「THE FIRST SLAM DUNK」は日本のみならず、韓国、台湾、香港、シンガポールなどアジア各地で大ヒットしている。漫画家の井上雄彦さんが監督・脚本を務めたアニメ映画は、単なるバスケットボールの世界を超え、人間ドラマとして感動せずにいられない完成度の高さだ。アジアの人々の心の琴線に触れるコンテンツの素晴らしさは日本人として誇らしくもある。

「THE FIRST SLAM DUNK」はじめアニメ人気に日本の活力を感じるが、総じてどうなのか。K-POPや映画・ドラマでグローバル展開する韓国、香港に隣接する深圳などがイノベーションをけん引する中国、新興企業が勃興しつつある東南アジアに比べて、日本の勢いのなさが気になる。

賃金低く「安い日本」が定着

第一生命経済研究所によると、日本の平均賃金は、2021年のOECD(経済協力開発機構)データでは、先進34カ国中で24位と低い。1ドル145円で計算すると、中東欧諸国にも抜かれて28位にまで下がる。1991年ごろは、日本は他のG7諸国(米国、英国、ドイツ、フランス、カナダ)とも大差はなかった。OECD諸国でも平均に近かった。それが今や下位グループにある。
「安い日本」が定着しつつある。

まさに<失われた30年>である。日銀出身で官房長官・厚労大臣を務めて現職を離れた塩崎恭久氏は、日本の2つの失敗は「イノベーション政策の失敗(大学改革、DX、GX)」と「人口政策の失敗(少子化対策、グローバル人材活用)」と指摘する。

アニメのようにアジアを席巻するグローバルコンテンツは他に何があるだろうか。香港の高級中華レストランで食したホタテはぷりぷりしてとても美味しく、確認は取らなかったが、私の地元である北海道産のホタテではないかと勝手に想像した。北海道産のホタテは香港はじめ中国の高級レストランに輸出されている超優良産品だからだ。
 北海道のニセコに代表される日本のパウダースノーは世界のスキーヤーから注目を集める。ニセコにはグローバル展開する高級ホテルが次々に建設され、さながら日本の中の<外国>のようだ。

踏ん張りどころのweb3

アニメ、ホタテ、パウダースノー。日本型グローバルを考える時、卓越した個別のコンテンツとともに、是非とも先進的なテクノロジーによるプラットフォームの整備に腹を据えて取りかかってほしいと思う。

ここにきて、新たなweb3(ウェブ・スリー)に自民党PTが珍しく前のめりになっている。まさにイノベーションの推進だ。果たして世界に先駆けて社会実装されるかと言えば、国会議員から「日本の企業も社会もweb3の意味を分かっていない。分からなければ、しょうがない。そういうところは置き去りになるだけだ。我々の仕事は制度をつくることだからそれ以上はできない」と盛り上がらない現実にやけっぱち気味の声が漏れる。だが、ここは踏ん張りどころだ。遅れに遅れたイノベーションの巻き返しを図って奮起してもらいたい。そうしなければグローバル人材を惹きつけることはできないだろう。同時に、アジアビジネス入門ジャーリストとしてこれから自分自身にできることを考えて実行したいと決意を新たにしている。

この記事を書いた人

毎日新聞社で記者として水戸支局、社会部、政治部、ワシントン支局で勤務し、主に政治・外交などを取材。政治部副部長、さいたま支局長を経て、執行役員国際事業室長でアジアを中心に国際フォーラム開催やアジア進出企業などの支援事業を担当。その後、毎日アジアビジネス研究所長でアジア、東京、地方をネットワーク化し事業マッチングなどの調査・支援事業に携わり、2023年3月に毎日新聞社を退社。同4月に株式会社アジア未来総研を創業。

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